日本橋にオープンしたオシャレなカフェ テーブルのロボットから声が…!? サービス By - UPDATE編集部 更新:2021-10-04 東京・日本橋に新しくオープンした『分身ロボットカフェ DAWN ver.β』。 広々とした店内は、緑がちりばめられ清潔感があります。 店に入ると出迎えてくれたのは1体のロボット。 実は、ここ『OriHimeDiner』は、分身ロボット『OriHime』が働くカフェ。 現代ではAIが発達していますが、OriHimeは人が遠隔操作をしており、彼らを『パイロット』と呼んでいます。 パイロットは、ALSなどの難病や重度障害を持っていたり、介護などの事情を抱えていたりする外出困難の人々。 分身ロボット『OriHime』や『OriHime-D』を遠隔操作しサービススタッフとして働く実験カフェなのです。 新しい働き方 ここでは、50名以上のパイロットが勤務。食事やドリンクを楽しみながらパイロットたちと話すこともできます。 提供:オリィ研究所 提供:オリィ研究所 提供:オリィ研究所 1人で来店する人も多いという『DAWN』カフェ。 取材を行った日も1人で来ているお客さんの姿が見られました。 パイロットはSNSなどを使って募集。 入口や、物販コーナー、料理を味わえるテーブル席でOriHimeを通してパイロットと話すことができます。 パイロットは、OriHimeの額部分にあるカメラから店内の様子を見ることができ、首を振るなどの動作もボタン1つで操作。 店内では、実際にOriHimeを動かす体験もできますよ。 寝たきりで福岡の自宅から出勤する大学生 脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)で寝たきりだという、ねね(中島 寧音)さん。 高校生の頃に先生に紹介してもらい、社会福祉士を目指し大学で勉強しながら、分身ロボットカフェで働いています。 だんだんとOriHimeの操作に慣れてきたという、ねねさん。ロボットと話すことになれていないお客さんも中にはいるようで…。 ねねさん お客さんから見た感じはロボットなんですけど、普通に話してほしいですね。 見た目はロボットでも、中身は温かみのある人間。普段の会話をするように話してほしいといいます。 また、この仕事を始めてから日常生活に変化があったとか。 ねねさん 福岡から東京ロボットカフェにつないでいるんですけど、遠くにいる人と話す機会がなかったので社会とのつながりができました!お客様が笑顔で帰ってくれたり、「よかった」といってくれたりするのはやりがいです。街中に当たり前にロボットがいて、外出が困難な人たちが働きやすくなる社会になってほしいです。 テクノロジーの力で、距離の壁を越え、さらに障がいによる社会の壁も越えることができたねねさん。 このようなロボットが街中に増えてほしいと願います。 母娘と一緒にパイロットを務める増田親子 パイロットを始める理由はさまざま。 4歳から電動車いすの、ゆーちゃん(増田 優花)さんは、「接客の仕事がしたい」と思って仕事を始めたといいます。 ゆーちゃんさん 人と話せる仕事をしたかったのですが、すべてにおいて介助が必要だったので難しかったんです。でも身体を優先しながら無理なく働けて、お客さんにも喜んでもらえたら嬉しいです。 ゆーちゃんさんは、なんと3つの仕事をOriHimeを使って兼業。 「不思議な感覚。どこでもドアのような…」と、新しい働き方で世界も広がっているようです。 ゆーちゃんさん ファストフード店の『モスバーガー』でも、OriHimeを通して働いており、そこではロボットが話すことで「怖い」と思われないようにしています。今はAIも発達していて、「AIなの?人間なの?」と思われるので「遠隔で操作しています」と伝えて、ロボットでも温かい接客を意識しています。 ゆーちゃんさんの母親で、パイロットのようちゃん(増田 容子)さん。先に働いていたゆーちゃんさんを見て、仕事を始めました。 ようちゃんさんは、24時間ゆーちゃんさんの介護をする必要がありますが、OriHimeなら少しの時間でも働けて楽しいといいます。 ようちゃんさんには、母親という立場から見てゆーちゃんさんにある変化が起きたことを教えてくれました。 ようちゃんさん ずっと英語の勉強をしていたのですが、才能を発揮できるところがなくて残念でした。でも、OriHimeなら遠隔で操作するので世界が広がりました。今度、娘が海外の人をOriHimeでもてなすんです! 分身ロボットカフェには海外から来店する人もおり、そんな時にはゆーちゃんさんの英語力が活かされたといいます。 ようちゃんさん 娘は筋肉が弱くて動けないのですが、OriHimeなら気持ちと一緒に、ボタン1つでアクションを起こせるので心の部分に大きく作用していると思います。生きがいにもなって、思ったことが形になることは自尊心にもつながって、健康面にも影響が出ているように思えます。 「娘が生き生きとしている姿を見るのが嬉しい」と母親目線で語ってくれたよーちゃんさん。 OriHimeは表情が変わりませんが、よーちゃんさんの話を聞いているとどこか笑顔で娘を誇りに思うような表情に見えてきました。 また、ゆーちゃんさんも気持ちが大きく変わったといいます。 ゆーちゃんさん 「できないと思っていたことができる」と分かったので前向きになりました。やりたいこともできて、外国の人とも話せました。 ゆーちゃんさんは、「これからもっと英語の勉強をしたい」と意気込んでいました。 親子、姉妹でパイロットを務める女性 秋田から、分身ロボットカフェで働くミヨシ(高橋 美喜)さん。介護のため外出困難だといいます。 ミヨシさんの娘さん、さらには妹さんもパイロットとして働いています。 ミヨシさんにも、母親からの目線で働く娘さんについて聞きました。 ミヨシさん 娘がやっているのを見て、ほかの人と話していて楽しそうだなと思いました。病気は苦しいと思うのですが、少しでも自分のことを考えないで意識をそらせるというか…。 ほかの人と楽しそうに話している時間だけでも、自分の苦しみから意識をそらすことができるのがいい点と感じたミヨシさん。 テクノロジーの力でさまざまな問題を解決できると未来を明るく見ていました。 ミヨシさん テクノロジーでいろいろなことを乗り越えられると思います。不自由でも、高齢になってもテクノロジーの力があれば未来が広がるかなと。さまざまなところで働いていると、たくさんの人と話せるので楽しいです! コロナ禍で健康面にも影響が出ていた女性は… 介助のサポートをうけ一人暮らしをしながらパイロットを務める、まさこ(今井雅子)さん。パイロット歴は半年です。 以前は、外で働いていたもののコロナ禍によって外出を自粛していると、健康面でもよくない影響が出てきてしまったといいます。 まさこさん 以前は外で働いていたのですが、新型コロナウイルス感染症の影響で活動が狭まってしまいました。 でも、OriHimeの操作は自宅で働けて通勤の時間もないし、仕事が終わったらすぐに休めるのでいいですね!いろいろな人に出会えるので幅が広がったと思います。 まさこさんも、神奈川県のカフェと東京都のモスバーガーで兼業している1人。 分身ロボットカフェとは違い、ロボットならではの苦労があるそうです。 まさこさん 分身ロボットカフェと大きく違うのは、OriHimeがどういったものかを分かっていないお客さんに驚かれるところ。声掛けをすると驚かれるので、「人間で…」と説明しますね。年配の方にはロボットということでフォルムに驚かれることもあります。 まだ一般化していない、ロボットを通しての接客。 分身ロボットカフェには、ロボットを介してパイロットとの会話を楽しみにして来店する人が多いものの、兼業している店では「OriHimeとはどういったものか」が周知されておらず驚かれてしまうようです。 お客さんとの会話は、見た目がロボットならではのいい側面もあるのだとか。 まさこさん お客さんとのやり取りが濃密ですね。大阪人なので、大阪弁で楽しく話すと「めっちゃ楽しかった!」といってくれることもあります。過去に相談員としても働いていたのですが、見た目がロボットだと、人間相手に話すよりもハードルが下がるためか、「自分には難病の家族がいて…」と、個人的な相談を受けることもありました。 ロボットが入れてくれるコーヒー 『分身ロボットカフェ DAWN ver.β』では、パイロットがコーヒーを入れてくれるバリスタも展開。 元バリスタでALSを患う、ミカさんは、この『BAR & Tele-Barista』でコーヒーを入れています。 肩にちょこんと乗ったOriHimeで、お客さんの要望や好みを聞くミカさん。 ミカさん お客様の希望に沿ったコーヒーと、コーヒーに合うチョコレートを選んでおすすめしています。 丁寧な作業をしながら、お湯が沸く待ち時間などもお客さんに寄り添う接客をしてくれます。 寡黙な職人のように見える大きなロボット『NEXTAGE』で、器用にヤカンやコップを掴み黙々とおいしいコーヒーを淹れていき、ついに完成。 実際にコーヒーをいれてもらう体験をしていた人に話を聞きました。 「大胆かつ繊細で、サッと動くけど細かい動きを見ると人間よりいいかも…とも思いました。本当に、寡黙な職人のようでした!」 バリスタの様子は動画でも見ることができますよ。 食事をしながらパイロットたちとの会話を楽しめる『OriHime Diner』と、『BAR & Tele-Barista』は事前予約制です。稼働日はウェブサイトでご確認ください。 『CAFE Lounge』は予約なしで利用できます。また、物販コーナーにいるOriHimeとは予約なしで会話が楽しめますよ。 寝たきりになっても、社会とのつながりが途絶えることなく、OriHimeを通じて関係を持つことができるシステム。 この取り組みが広がれば、より多くの人が救われ生きる希望となるでしょう。 [文・構成/UPDATE編集部] この記事をシェアする Share Post LINE
東京・日本橋に新しくオープンした『分身ロボットカフェ DAWN ver.β』。
広々とした店内は、緑がちりばめられ清潔感があります。
店に入ると出迎えてくれたのは1体のロボット。
実は、ここ『OriHimeDiner』は、分身ロボット『OriHime』が働くカフェ。
現代ではAIが発達していますが、OriHimeは人が遠隔操作をしており、彼らを『パイロット』と呼んでいます。
パイロットは、ALSなどの難病や重度障害を持っていたり、介護などの事情を抱えていたりする外出困難の人々。
分身ロボット『OriHime』や『OriHime-D』を遠隔操作しサービススタッフとして働く実験カフェなのです。
新しい働き方
ここでは、50名以上のパイロットが勤務。食事やドリンクを楽しみながらパイロットたちと話すこともできます。
提供:オリィ研究所
提供:オリィ研究所
提供:オリィ研究所
1人で来店する人も多いという『DAWN』カフェ。
取材を行った日も1人で来ているお客さんの姿が見られました。
パイロットはSNSなどを使って募集。
入口や、物販コーナー、料理を味わえるテーブル席でOriHimeを通してパイロットと話すことができます。
パイロットは、OriHimeの額部分にあるカメラから店内の様子を見ることができ、首を振るなどの動作もボタン1つで操作。
店内では、実際にOriHimeを動かす体験もできますよ。
寝たきりで福岡の自宅から出勤する大学生
脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)で寝たきりだという、ねね(中島 寧音)さん。
高校生の頃に先生に紹介してもらい、社会福祉士を目指し大学で勉強しながら、分身ロボットカフェで働いています。
だんだんとOriHimeの操作に慣れてきたという、ねねさん。ロボットと話すことになれていないお客さんも中にはいるようで…。
お客さんから見た感じはロボットなんですけど、普通に話してほしいですね。
見た目はロボットでも、中身は温かみのある人間。普段の会話をするように話してほしいといいます。
また、この仕事を始めてから日常生活に変化があったとか。
福岡から東京ロボットカフェにつないでいるんですけど、遠くにいる人と話す機会がなかったので社会とのつながりができました!
お客様が笑顔で帰ってくれたり、「よかった」といってくれたりするのはやりがいです。街中に当たり前にロボットがいて、外出が困難な人たちが働きやすくなる社会になってほしいです。
テクノロジーの力で、距離の壁を越え、さらに障がいによる社会の壁も越えることができたねねさん。
このようなロボットが街中に増えてほしいと願います。
母娘と一緒にパイロットを務める増田親子
パイロットを始める理由はさまざま。
4歳から電動車いすの、ゆーちゃん(増田 優花)さんは、「接客の仕事がしたい」と思って仕事を始めたといいます。
人と話せる仕事をしたかったのですが、すべてにおいて介助が必要だったので難しかったんです。
でも身体を優先しながら無理なく働けて、お客さんにも喜んでもらえたら嬉しいです。
ゆーちゃんさんは、なんと3つの仕事をOriHimeを使って兼業。
「不思議な感覚。どこでもドアのような…」と、新しい働き方で世界も広がっているようです。
ファストフード店の『モスバーガー』でも、OriHimeを通して働いており、そこではロボットが話すことで「怖い」と思われないようにしています。
今はAIも発達していて、「AIなの?人間なの?」と思われるので「遠隔で操作しています」と伝えて、ロボットでも温かい接客を意識しています。
ゆーちゃんさんの母親で、パイロットのようちゃん(増田 容子)さん。先に働いていたゆーちゃんさんを見て、仕事を始めました。
ようちゃんさんは、24時間ゆーちゃんさんの介護をする必要がありますが、OriHimeなら少しの時間でも働けて楽しいといいます。
ようちゃんさんには、母親という立場から見てゆーちゃんさんにある変化が起きたことを教えてくれました。
ずっと英語の勉強をしていたのですが、才能を発揮できるところがなくて残念でした。でも、OriHimeなら遠隔で操作するので世界が広がりました。
今度、娘が海外の人をOriHimeでもてなすんです!
分身ロボットカフェには海外から来店する人もおり、そんな時にはゆーちゃんさんの英語力が活かされたといいます。
娘は筋肉が弱くて動けないのですが、OriHimeなら気持ちと一緒に、ボタン1つでアクションを起こせるので心の部分に大きく作用していると思います。
生きがいにもなって、思ったことが形になることは自尊心にもつながって、健康面にも影響が出ているように思えます。
「娘が生き生きとしている姿を見るのが嬉しい」と母親目線で語ってくれたよーちゃんさん。
OriHimeは表情が変わりませんが、よーちゃんさんの話を聞いているとどこか笑顔で娘を誇りに思うような表情に見えてきました。
また、ゆーちゃんさんも気持ちが大きく変わったといいます。「できないと思っていたことができる」と分かったので前向きになりました。やりたいこともできて、外国の人とも話せました。
ゆーちゃんさんは、「これからもっと英語の勉強をしたい」と意気込んでいました。
親子、姉妹でパイロットを務める女性
秋田から、分身ロボットカフェで働くミヨシ(高橋 美喜)さん。介護のため外出困難だといいます。
ミヨシさんの娘さん、さらには妹さんもパイロットとして働いています。
ミヨシさんにも、母親からの目線で働く娘さんについて聞きました。
娘がやっているのを見て、ほかの人と話していて楽しそうだなと思いました。病気は苦しいと思うのですが、少しでも自分のことを考えないで意識をそらせるというか…。
ほかの人と楽しそうに話している時間だけでも、自分の苦しみから意識をそらすことができるのがいい点と感じたミヨシさん。
テクノロジーの力でさまざまな問題を解決できると未来を明るく見ていました。
テクノロジーでいろいろなことを乗り越えられると思います。不自由でも、高齢になってもテクノロジーの力があれば未来が広がるかなと。
さまざまなところで働いていると、たくさんの人と話せるので楽しいです!
コロナ禍で健康面にも影響が出ていた女性は…
介助のサポートをうけ一人暮らしをしながらパイロットを務める、まさこ(今井雅子)さん。パイロット歴は半年です。
以前は、外で働いていたもののコロナ禍によって外出を自粛していると、健康面でもよくない影響が出てきてしまったといいます。
以前は外で働いていたのですが、新型コロナウイルス感染症の影響で活動が狭まってしまいました。
でも、OriHimeの操作は自宅で働けて通勤の時間もないし、仕事が終わったらすぐに休めるのでいいですね!いろいろな人に出会えるので幅が広がったと思います。
まさこさんも、神奈川県のカフェと東京都のモスバーガーで兼業している1人。
分身ロボットカフェとは違い、ロボットならではの苦労があるそうです。
分身ロボットカフェと大きく違うのは、OriHimeがどういったものかを分かっていないお客さんに驚かれるところ。声掛けをすると驚かれるので、「人間で…」と説明しますね。年配の方にはロボットということでフォルムに驚かれることもあります。
まだ一般化していない、ロボットを通しての接客。
分身ロボットカフェには、ロボットを介してパイロットとの会話を楽しみにして来店する人が多いものの、兼業している店では「OriHimeとはどういったものか」が周知されておらず驚かれてしまうようです。
お客さんとの会話は、見た目がロボットならではのいい側面もあるのだとか。
お客さんとのやり取りが濃密ですね。大阪人なので、大阪弁で楽しく話すと「めっちゃ楽しかった!」といってくれることもあります。
過去に相談員としても働いていたのですが、見た目がロボットだと、人間相手に話すよりもハードルが下がるためか、「自分には難病の家族がいて…」と、個人的な相談を受けることもありました。
ロボットが入れてくれるコーヒー
『分身ロボットカフェ DAWN ver.β』では、パイロットがコーヒーを入れてくれるバリスタも展開。
元バリスタでALSを患う、ミカさんは、この『BAR & Tele-Barista』でコーヒーを入れています。
肩にちょこんと乗ったOriHimeで、お客さんの要望や好みを聞くミカさん。
お客様の希望に沿ったコーヒーと、コーヒーに合うチョコレートを選んでおすすめしています。
丁寧な作業をしながら、お湯が沸く待ち時間などもお客さんに寄り添う接客をしてくれます。
寡黙な職人のように見える大きなロボット『NEXTAGE』で、器用にヤカンやコップを掴み黙々とおいしいコーヒーを淹れていき、ついに完成。
実際にコーヒーをいれてもらう体験をしていた人に話を聞きました。
「大胆かつ繊細で、サッと動くけど細かい動きを見ると人間よりいいかも…とも思いました。本当に、寡黙な職人のようでした!」
バリスタの様子は動画でも見ることができますよ。
食事をしながらパイロットたちとの会話を楽しめる『OriHime Diner』と、『BAR & Tele-Barista』は事前予約制です。稼働日はウェブサイトでご確認ください。
『CAFE Lounge』は予約なしで利用できます。また、物販コーナーにいるOriHimeとは予約なしで会話が楽しめますよ。
寝たきりになっても、社会とのつながりが途絶えることなく、OriHimeを通じて関係を持つことができるシステム。
この取り組みが広がれば、より多くの人が救われ生きる希望となるでしょう。
[文・構成/UPDATE編集部]